単行のカナリア

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ニッケルオデオン【赤】/道満晴明 アブノーマルに爽やかな短編集


 道満晴明の短編集「ニッケルオデオン【赤】」。 




 成人向け雑誌で四コマを描いていることで有名(だと思う)な作家の短編集。 最近では一般誌でも活動しているようで、ちょくちょく評判を聞くようになってきました。そこでなんとなく手に取ったこの作品が個人的に当たりだと思ったので感想を書きます。ちなみにその四コマ「ぱら☆いぞ」は可愛らしい絵柄に反してシュールでアブノーマルなネタが冴えていてオススメ。


 8Pの短編集からなる今作は、なんでもアリのシチュエーションとキャラクター同士の繊細な感情の通い合い、ほのかなアブノーマル性が面白い作品。この作家の何よりの持ち味は思わずドキッとさせるアブノーマルさだと思います。ただアブノーマルでは語弊があるので詳しくいうならば、登場キャラクターのちょっとした残虐さや変態さです。それがフックになっているのは間違いなく、でもそこまで過剰でもないってのが絶妙なバランスかなと。


 最終話の「回収委員と幻肢痛」が個人的にお気に入りのエピソード。地雷を踏んで四肢がもげながら生きている先輩の体を主人公が回収するという、とんでも設定にくわえて、どうやら人気の先輩らしくて後輩たちがこっそり肉片を所持してぺロぺロしているという、ドキッとさせる展開がありました。それでもって結末は爽やかに〆のに驚かされましたね。

 この漫画はそういったアブノーマルさがありつつも、結末がほろ苦かったり、爽やかだったりするのがいいですね。取扱注意の劇薬を丁寧に調合しているというのか、とにかく「なんでもアリ」で楽しませるのではなくて、しっかりと物語で楽しませてくれるのがナイス。特に「ヒールとスニーカー」という身体がつながった双子の物語は少し涙腺を揺さぶられたほど。ストレートにイイ話だって書けるんですよね。ただシチュエーションは少し奇抜ですが。


 
 なんていいつつ設定だけでもニヤリとできる短編もあります。「ウォレン=ウィルソンは二度殺される」や「フェイスハガー」はシンプルに引きこまれたショートショートですから。というかそもそも短編としては上質なもので、さらに刺激があって二度美味しいという感じなのが「ニッケルオデオン【赤】」です。

 それにラブストーリー、姉妹愛、SF、BL、アメコミ、童話などバラエティが豊富なのも特徴でしょう。作家の妙は、その豊富であることがイコール雑多にならないように、かすかに短編同士がリンクしている構成になっています。伏線というほどではないですが、そういったギミックがまた芸が細かい。作家として「上手い」と手腕が評価されているのも納得の出来です。


 まあでもやっぱり私は、命懸けのしりとりで「ペッティング」という単語が出てきたり、アグネス法(要約するとロリコンは処刑)というジョークが脈絡もなく出てくる、この作家ならではの奇抜なところに惹かれました。この短編の魅力は爽やかなストーリのフックとなるアブノーマルさがあってこそだと思っています。というかこれに関しては個人的な趣味ですね。もちろんそれ抜きでも見応えある短編で、次の作品にさらに期待です。。

 
 
 書き終えて見返して思った。この記事は一体誰に向けて書いたのだろう。感想? 紹介? でも紹介というには不親切。感想というには物足りない。もとは「面白かった」から「オススメ」したいという気持ちで書いたのだけど、なんとなく書き出したからどっちつかずになってしまった。読者と目的を意識して書かないと、まとまらない記事になる。これは反省ですね。だからといって消すことはないので追記で弁解。