単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

THE BACK HORN名曲レビューその25「孤独な戦場」


 先週人生で初めて吐き気がするほどに人間だらけの東京に行ってきました。狂いそうなノイズの洪水にヘッドフォンが外せなくて、よく聞いていたのがTHE BACK HORNの「孤独な戦場」。この曲は雑踏のなかで聞くといっそうのこと良さが際立つようで、満員電車の中で聞いたときは特にどっぷり浸れる感覚を味わえました。 


 ということで久しぶりとなる全曲レビューその25「孤独な戦場」 神様、俺たちは悲しい歌が気が触れるほど好きです!

吐き気がする程に人間だらけ
ああ どうせイナカモンとクダを巻いて

 
 THE BACK HORNの楽曲の中でも抜群の存在感がある一曲。


 苛立ちをオブラートに包むのではなくて拡声器で叫び散らす。唾を吐き捨てるではなくて、ションベンをぶっかけるといった感じで。たたでさえ癖のあるバンドなのに、さらに下品さと野蛮さがプラスされてやたらと泥臭い仕上がりになってます。これぞまさしくTHE BACK HORNならではの表現かと。さらにいうならば彼らが若かしり頃ならではの表現。


 そしてなにより詞の切れ味が半端ない。というか鮮烈なフレーズが多いんですよね。「顔面性器が笑っている」「俺達は悲しい歌が気が触れる程好きです」「肉と肉の間で窒息してく理性」などが印象的。イナカモンとあるように、泥の中でもがいているような、這いつくばって叫んでいるような。そんなどうしようのなさがまた魅力的で。まったくもって綺麗事ではありません。それゆえに万人にオススメできないのですが、ハマるひとはハマってしまうであろう屈折した魅力があると思いますね。
 

一人 二人 三人 死人だらけさ 今日も
俺は生き延びてやる 心の闇の中で

 
 それにしても怒りを遠慮なく吐き出している様は気持ちがいい。日常において不満を表明できることなんてそうないですから。その不満の対象が一般的なことだったらなおさら。だから普段はそういった感情を抑えてしまいがちで、たまには爆発させてスカッとしたい。そんなとき言わなくてもいいことまで代弁してくれて、さらに愚痴を垂れているだけでなくて前を向く、考えようによっては優しい曲ともいえるかもしれません。
 
 しかし、そうして怒りを吐き下しても明日も「孤独な戦場」には変わりない。どうしようもなさにぶちぎれても不満をこぼしても何も変わらない。生き抜くことを決意しても同じこと。それなのにこうも現実に噛みつくのはただの悪態になってしまうのかもしれない。


 なんて節もあるので寂しい曲といったらそこまでですけど、あんがい支えになるのがこういった曲です。少なくとも私にとっては切実なテーマです。勝っても負けても意味がない孤独な戦場なんかで死んでたまるか、と。


ぬるいフォークソング撒き散らしてる奴ら
金を募金しろとうるさくせがむババア


 歌詞は批判的になっているのにどこかパッとしないのが、一見すると都会に馴染めない人間の悪態って感じがあるからでしょうか。これらの詞の鋭さの一方で軽快なギターサウンドになっていて。それによって聞きやすさがあるのでバランスがいいと感じますね。

 まあ人によってはこの歌詞をギャグと捉えてもおかしくなくて。そう捉えても一癖も二癖もあるので全然問題ない。色々と面白い曲だと感じました。もちろん面白いだけでなくて切実なテーマもあります。個人的には「俺が怖いのはただお前らが人間だってことさ!」なんて納得せざる得ない歌詞でした。


 なにかと聞きどころがたくさんある曲だと思いますね。それと間奏の掛け合いがわりと気にっています。ギターのうねりがカッコいい。大のお気に入りの曲です。