単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

映画『けいおん!』 感想


   
 知らない街の映画館にて。


 実はこれまで「けいおん!」を見に行くかどうか迷っていました。運よく午後からずっと自由だったのと、前々から良い評判を耳にしていたので、せっかくだからと映画館に足を運びました。チキンな私は、地元の映画館では知り合いに会うことを恐れて、わざわざ遠出して知らない街の映画館へれっつ&ごー。


 遠出した映画館はわりと田舎に立地していたせいか、館内は空いていてカップルと女子高生しかいませんでした。おかげで後方の良い席でじっくりと鑑賞することできました。たまに目にする「けいおんは女性にも人気!」という煽り文句、あれは私の行った映画館では本当ですね。驚いたことに、男性客より女性客の方が多かったです。



 ここからネタバレの感想タイム!  



 先に結論から書くと、これまで「けいおん!」を見ていた方に心からオススメできる最高の出来。どこに行ってもけいおん!けいおん!ということで。


 まず、梓が可愛いんですよね。天使なんですよ、天使。後輩ではなく、子猫でもなく、梓は天使なのです。私がけいおんを好きな理由の一つにキャラクターが可愛いってのがあり、大スクリーンの中を笑顔で駆け回るキャラクターを見れたのは幸せ。もう一番最初のデスデビルの楽曲に当てフリしてお芝居をしているシーンから、これまでアニメで見てきた「けいおん!」の雰囲気に浸れましたね。「けいおんの映画って大丈夫なのか」とちょっと緊張していたのがバカみたいでした。

 可愛いというのは、ファッションセンスの残念さも含めての可愛さです。相変わらずユニークな恰好でした。劇場版仕様のハイセンスファッション!特に唯のロンドンでのファンションは特筆ものだと思います。あんなん見たことないよ!こういった独特のセンスが女子高生に人気の秘訣なんでしょうかね。


 
 
 そして、これまたストーリーが素晴らしかったし、脚本に引きこまれました。番外編というよりもはや本編。ロンドンに赴いて「そっか、これまでの曲でいいんだ」と自分たちの音楽を再確認して、名曲「天使にふれたよ」が出来上がるまでの舞台裏にスポットを当てて、あらためて唯たち四人を卒業させる。アニメの段階で充分に描かれていたと思っていましたが、こうしてまだ掘り下げられる点があったようです。なんだかんだで骨太のストーリー。目が離せない濃厚な二時間でした。



 アニメ本編では、さらっと演奏された最終話のサプライズプレゼントでしたが、その裏で唯たちが苦心して決行したというドラマがあったのですか。苦心は言葉が違いますね。プレゼントは何をすれば相手が喜ぶかを考えることすら楽しいことですから、その努力は苦しいわけがない。そして、いよいよ曲をプレゼントしようとする直前、屋上に集まって「緊張する!!」と心の内を明かしてお互いに励まし合ったシーンには思わず心を打たれました。

 おそらく初めての「楽しむ」だけではだめで「楽しんでもらえ」ないと意味がない演奏だと思います。音を楽しんできた彼女たちが、今度は気持ちを伝えるために音を鳴らす。音楽が目的ではなく手段になって、それこそ練習シーンはあまり描かれていませんが、音楽をより深めることができたといってもいいのではと思います。それも大切な存在である梓がいたからこそってわけなので、梓はやはり天使になるのです。

 



 話は変わって映像についてなど。映画館の大スクリーンで気付かされたのが、精微に描かれている背景の素晴らしさでした。色彩、小物、細やかなところにまで息吹を感じられる描かれっぷりで、その素晴らしさは劇場で際立っていました。ロンドンでポストっぽいところに唯が手を突っ込んで、それが犬のフンを処理するところだと分かって、逃げ出すシーンがあったじゃないですか。あれとか物凄く小さくキャラクターが描かれているのは劇場のスクリーンならではと思いました。あの俯瞰するシーンで「舞台は変わっても唯たちはやってることは変わらないな」なんてことを感じましたね。
 


 まあなんといっても、ライブシーンがすごかった。コードを押さえる指使い、弦の振動、ピッキングの動き、リアリティのある躍動的なライブシーンは迫力がありました。このアニメは映像が雄弁に語りますよね。ロンドンの映像の新鮮さがあるのだって、これまでの丁寧な京都の描きがあってこそは確かでしょう。


 あと、キャラクターの表情の描きも見応えがありました。アップになっていない後ろのキャラクターも表情豊かなんですね。卒業旅行をどこにするかを部室で話し合っていたシーンで、結果「ロンドン」行きに決まったあとに澪がずっと微笑んでいたのが印象的でした。私が気付けなかっただけで、恐らくはアニメでも丁寧に描かれていたのだと思います。劇場ではそれが顕著に伝わってきたから「けいおん!」の空気感をよりいっそう味わえた感じです。そんな感じで映像美はお手の物。ロンドンの描写も活き活きしていて思わず旅行したくなりましたし。


 
 
 で、私が「けいおん!」にハマったのはあの音楽があってこそで、その点でも満足。今回の主題歌もやはり素晴らしかった。Tom-h@ckさんはいい仕事をしますね。BGMも仕様が変わっていて、特にロンドンのBGMはこれまでのほのぼのBGMと、新しいロックテイストのBGMまで充実していて、旅行といった雰囲気が良く出ていたようでした。ホテルに戻ると相変わらずの放課後ティータイムのムードになるわけですが、そこの切り替えっぷりも良かったです。唯の台詞であったように「これまでの曲でいいんだよ」と自分たちの音楽を確かめる一連の過程は、これらの劇場ならではのBGMがあったからこそより伝わりやすかったのではと思います。