単行のカナリア

感じて想する

Syrup16gの曲レビュー 「She was beautiful」


  Syrup16gの曲レビュー 「She was beautiful」。

 初っ端からすべての歌詞を引用。

いつまでも子供のままで あのときの言葉を今日もかみ砕いて
眠る
いつまでも子供のままで あのときの笑顔をずっと忘れないで

She was beautiful 


 とツイートに収まる文字数です。過去を引き継いでいくことと、過去の美しさを歌っています。
 
 記憶の扉をノックしつづけるようなソナー音に、循環する4コードの美しさの極致のようなメロディーが反復しつづけて。波静かなギターリフや間奏から新たな展開を迎えることもなく、いつまでも続いてく感覚があります。このまま延々と。

 まどろみのなかで過去を思い出す。すでに過ぎ去ってしまった日々と懐かしむだけでなく、あのときの言葉と笑顔はいまも心のなかで生きつづけているし生かしつづけていく……と「今、ここ」からあのときに眼差しを向けています。優しいような、悲しいような眼差しを。

 「She was beautiful」は言葉数は少なくて深読みの余地がありません。
 抽象的な言葉と感情を揺らす音像のせいか、もはや手が届かないあのときを想起させられます。正直なところ、私にはこの歌詞になる「あのとき」に該当するような記憶は持ちあわせていません。それなのにこの曲を聞いていると「あのとき」を想起しているのが不思議でおもしろい。ありもしない世界を幻視してしまう。


 イメージの例えば。

  • まどろみながら記憶の海にずぶずぶと潜る
  • ソナー音を飛ばしながら沈んで深海を探索
  • そして心の奥に隠していた真相風景と出会う、
  • 永遠に失われた彼女の美しさを胸にしまい込む


 詞もサウンドも隙間が多くメロディーは耽美でイメージ喚起力は抜群。それぞれの体験とそれぞれの想像力で描くあの頃にショートトラベルする最適の曲で、シンプルな歌詞ではあるけれど色々な人に多様な思いを抱かせていると思います。
 そしてなにより「She was beautiful」はただただその美しさに魅了されます。

 「She was beautiful」はCOPYの一曲目、これが一曲目なのです。だから、ここから静と動の名曲オンパレードのアルバムが始まるわけです。