単行のカナリア

感じて想する

7.トルエン先輩

 ゲームがなかった時代には青少年はシンナーを吸っていたとか、いや青少年はゲームをしながらシンナーを吸っていたとかの話が話題になっていた。俺が建築業界に従事していたときに何度か手元(新人アルバイトみたいな役割)についていた大工のTさんは、「みんなでシンナー吸ってはビーム飛ばしあってゲームに遊んでた」と言っていた。シンナーが引きおこす集団幻覚のなかでゲームをしていた人だった。俺はその人が休憩時間に喫煙所に行くのに付いていってはそういう話を聞かせてもらっていた。

 

 その人曰く、 

・昔は塗装業者の倉庫に忍び込んでシンナーくすねて吸ってた

・若い塗装工で歯がボロボロのやつはシンナー吸ってる、あいつとか

・ある家に光が降り注いでいて、つぎの日にその家の猫が死んだ

・シンナー吸うと光が見えてくる。

・練習すると指からビームが撃てる。

・歯がダメになるし頭悪くなるし金かかるからお前は絶対にやるなよ

 

 俺があまりに楽しそうに話を聞いていたせいか、何度も「お前、絶対にやったらアカンぞ」と釘を刺されたこともあった。マキタのインパクトドライバーでガチっと音がするくらいに念を押されて。後日、シンナーの中毒症状ついて調べていると、「ビームが撃てるようになる」という体験談がちらほらとあったし、どうやらビームはシンナー中毒者にとっては一般的な症状なのかもしれない。その人の「俺らが若いころはビーム撃って遊んでたぞ」と言いながら指をにょっと突きだす仕草が、顔の厳つさに似合わずにかわいかったことが記憶に強く残っている。

 関係はあまりないが、熟練の塗装工は、現場で配色カードを見せるだけで、そこらへんの木の破片をパレットに、複数の塗料缶からペンキを混ぜ合わせて指定した色を完璧に作りだすから、俺はその度に感心したものだった。

 「俺らが若いころなんてシンナー吸ってビーム撃ちあって遊んでたぞ」から始まる70年代か80年代の話もあれば、俺が甥っ子とライン通話しながらスプラトゥーンのタッグマッチでよく遊ぶ話もある。

 

 兵庫県中央区で見かけた看板。

 

 シンナー(トルエン)を吸う先輩が出てくるかっこいい曲。


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