単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

「ハイパーハードボイルドグルメバラエティ」と「ガリベンガーV」を見つづけている

 「テレビ何見てるの?」と聞かれることはまずないけれど、もしそのときがあったら即答したいのが「ハイパーボイルドグルメリポート」と「ガリベンガーV」。といっても私は、現在はテレビを所有していないのでGyaoTverの見逃し配信で視聴しています。

ハイパーハードボイルドグルメリポート 

ハイパー
 
 「食うこと、すなわち生きること」をテーマに、ヤバい人たちのヤバい飯を通してヤバい世界のリアルを見る異色のグルメ番組。というのが公式の紹介文。

 このように、「ハイパーボイルドグルメバラエティ」は世界の様々な辺境の地に訪れ、そこでの多種多様な食を知ることができる番組。これまでの取材対象は、ケニアのゴミ山、台湾マフィア、ロシアの極北カルト、ボリビアの人食い炭鉱など、いわば辺境の地がメイン。かつ、極東からやってきた取材に付き合ってくれるのはたいてい親切な人々でして、スポットライトを当てられるのがユーモアに富んだ方々が多いのも楽しみの一つでしょう。

 冒頭の画像は、地上波放送ができずにネット配信のみで公開されている、西アフリカにあるリベリア共和国の廃墟に取材したときのハプニング。この回は、絶えず緊張感ある内容になっており、怒号で歓迎された出会いからはじまり、インタビュワーの常識外れの質問に対して失笑で返されたり、……ラストは生々しい金銭のやり取りで終わる構成に至るまで、非常に見ごたえがあります。




 ただリベリア編は例外として基本的には、取材時のハプニングやいざこざなどの分かりやすいインパクトを楽しむ番組というよりかは、市井の人々と食事を共にし、個人の生活に寄り添うことで、その個人を複雑に取り巻いている環境の一端を知ることができる、その切り口が魅力の番組だと思っています。

 番組のよくある風景に、ディレクターが「どうしてここに住んでいるの?」「どうしてそうなっている」といった質問をよく投げかけるのですが、そのほとんどの回答が「それ以外の選択肢がなかった」といったもの。そこには、生まれたときから投げ込まれた環境の監獄があり、社会のリズムに合わせざるえない不可抗力の惰性があり、日々の「食」のなかにそれらの彼らが置かれた環境の複雑さが表れています。


 で、さらにグルメ番組の名を謳っているように、おすそ分けされた食をディレクターがおいしそうに食べるシーンも見どころでしょうね。キャッサバ団子鳥辛スープ、ヤギの頭見込みスープなどなど。「ハイパーハードボイルドグルメリポート」はドキュメンタリーである一方、れっきとしたグルメ番組でもあるわけで、その点もしっかりと抑えてくれます。食の内容にしても、カロリーを満たすものだけでなくサプリメント的なものも登場し、ボリビアの人食い炭鉱回のコカの葉を噛みながらハードリカーを飲んで仕事に備える習慣は参考になりました。

 余談になりますが、食という糸口で文化・環境に切り込んでいくアプローチとして、上原善広の「被差別の食卓」「被差別のグルメ」があります。この本のあとがきにある、「身体と精神を分けて考えられないように、食もまた、味と精神性を切り離すことができない」との言葉、なるほどそのとおり。私は、この本をキッカケに興味がわき、あぶらかすさいぼし・フクゼンの天ぷらなどを探して食べたことがありました。空腹が味のスパイスのように、精神性もまた味のスパイスになるのでしょう。
  
 そんなこんなで、「ハイパーハードボイルドグルメバラエティ」で登場するグルメの数々は、未知の文化への驚きと憧れから、向精神薬の服用で低下しつづける食欲を掻きたてられ、私はこの番組をグルメ番組として見ていると気づかされ、タイトルに偽りはないんだなあと納得しています。 

 不定期配信の番組で、TVerGYAOで無料配信されたりされていなかったりして、記事を書いた現在は公開されていないようです。ですが、アマゾンプライムやネットフリックス等の配信サイトで過去アーカイブがあるのでオススメです。

ガリベンガーV 

小峠

 ハイパーボイルドバーチャルバラエティ……ではなくて「ガリベンガーV」は、講師(専門家)を招いてクイズを通じて知識を深めていく教養バラエティ番組です。最大の特徴は、従来は芸人やアイドルが担当していたひな壇をVtuber(以下、Vと表現します)が担当していること。

 サメ、プラナリア、体臭、睡眠などの多岐に渡るテーマとそれを開設する講師陣の魅力にくわえて、外せない番組の見所は小峠とのやり取り。Vは暗黙の了解(特殊な年齢設定、キャラクター設定)が多く、それに関して小峠がギリギリの領域まで踏みこんで斟酌せずにツッコんでいくやり取りは面白い。
 
 よくある掛け合いの一例。
png

 小峠の前では、VTuberが兼ね備えているあらゆる特殊な資質は、日常に回収されて笑いの断片化していく。
 
 ただこれらの点を除けば、正直なところ従来のテレビ番組とそう変わりありません。でも、この番組には電脳少女シロちゃんが毎回登場します。これこそが私が見はじめた理由であり、見つづけている最たる理由なのです。

 番組MCの小峠が電脳少女シロちゃんをインタビューで評価したときの言葉、

「電脳少女シロちゃんは、すごく頭の回転も速く、知識も豊富で博学。その場の空気もきちんと飲み込める、頭のいい人だと思います。賢いです。ただ単に無茶苦茶なことを言うのではなく、きちんと考えて自分の役割を分かってやっているという感じは素晴らしいと思います」
https://thetv.jp/news/detail/183921/

 私もまったく同意見で、彼女がVという特殊な立場をうまく活かし、小峠に危険球のコミュニケーションを仕掛けていく様に惚れ惚れしています。そしてそれはもちろん、そのボールに対して最高の返しをする小峠の存在があってこそ。

 Vを知らない層がこの番組を評価するときの「小峠が面白いよね」「小峠のツッコミが活かされる構成になっている」といった褒め言葉はなるほど一理あり、確かにシロちゃんや他のVのボケが面白さに昇華されるのは小峠の手腕によるものがあります。それを裏返せば、小峠のツッコミが引き立つためにVの存在があるともいえるでしょう。
 
 この番組の面白さの構図は、小峠のツッコミ×(VTuberのボケ、講師陣のキャラクター性、テーマの多様さ)。それとシロちゃんを筆頭に番組に登場するVTuberは、バーチャルという存在ながら人間の生理に関する食欲や排せつの話をよくしていて、小峠の負担は増す一方。

 で、小峠が放送を重ねるごとにVTuber文化に理解を深めていくあたりは、異文化交流のようなストーリー性すら存在。初回配信では小峠は「はしゃいんでじゃねーよ!アニメーションども!」と気炎を吐いていましたが、慣れてきた頃の放送回で年齢を聞かれたシロちゃんが「1歳半」と答え、それに対してゲストが「そんなわけないじゃん、だって喋ってじゃん」と鋭い返しをしたときに、小峠が「そういうこと言わずにやってきんたじゃねえのかよ!」とVの立場からフォローするところを目にして、じんわりと感動しました

 というかんじで、「ガリベンガーV」も放送は不定期になりますが、こちらは放送ごとにTverで見逃し配信があります。


 
 
  「ハイパーボイルドグルメバラエティ」と「ガリベンガーV」はどちらも知的好奇心をくすぐられるすばらしい番組なので気になったら見るんだV。(これはガリベンガーVのキメ台詞)